自転車で100名山 最後の3000m峰 1

春スキーで訪れる事が多いかった乗鞍岳に遂に登るときがやってきた。北アルプスから見ても御嶽さんから見ても裾広くどっしりと鎮座している。
この山の大きさと高さを知るだけに、いざ自転車で登ろうとすると、その困難さにいささか躊躇してきたがやはり越えねばならない時が来たのだ。
奈川渡ダムから僅かに上高地側に進んだ前川大橋標高1004mをスタートしたのは2011年9月9日6時。調子良く自転車を漕げたのは最初のカーブまでで、グッと勾配が増すと辛抱堪らず地面に足が着いた。そうなると、二度とペダルを踏むことは出来ず、後は自転車と二人連れのハイキングよろしくずっと押し登ることになった。
出だしから降り続いていた霧雨が時には肌を痛く叩く雨に変わるより早く、路肩の枝を打つ雨音の変化でそれと分かる。この微妙な変化を楽しめるのも自転車旅行ならではである。
それでも時にはバス停の小屋に逃げ込んだりしながらも、遂に2000mを突破したのは前川大橋から7時間が過ぎていた。7時間で1000m、1時間当たり標高にして150m弱というところである。この分では今日中に畳平迄は着けそうに無い。
高所の雨は夏でも身体を冷やす。遂に位ケ原山荘に転がり込んだ。15時に近い時間になっていた。まきストーブに火が入ると、ストーブ側の頬の緊張が解けるのが分かる。この暖かさと安心感はテント生活に慣れた私にとっても有難いご馳走である。気持ちの良い管理人さんの対応も楽しく休める夜を保証してくれた。この夜の客は私一人だった。
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