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2007~08年 自転車で100名山 甲信越の旅

自転車で100名山 その3


大阪・この花山の会 圓尾勝彦


「剣岳・点の記」のように日本百名山に主題を採った小説は多い。私が自転車での百名山めぐりを思い立った時、最初に浮かんだ計画は「伊豆の踊子」のトレースだった。願わくば、作品と同じ秋の天城峠を歩きたいと思った。

2007年と2008年の登山 



 


 


2007年 旅の目的地は大菩薩峠


地図やガイド本では大菩薩嶺を百名山としているが、深田久弥は大菩薩岳を日本百名山とし、大菩薩嶺とは大菩薩峠を指す名称だったと、述べている。これに触発されて漢字辞典を引くと「嶺」は「高い峠」とあった。ここでも著者の博識を知ることになったが、話題は大菩薩峠に限りたい。


私は未完の長編時代小説「大菩薩峠」を読破したことが無い。余りに大部であることと登場人物の多さと、話の筋が転々とするので私の読解力では掌握出来ない事がその理由である。片岡千恵蔵が扮する虚無僧が、佇みながら仰ぎ見る富士山が、私の大菩薩峠のイメージになっている。しかし、その情景すらも映画の中の一コマなのか、空想の産物なのかさえ定かでない。




大きな地図で見る


大菩薩峠を越える青梅街道は江戸と甲府を結ぶ主要な街道で、多摩川の支流の小菅川に沿って真直ぐに峠の東面に達している。

 

雲取山祭登山口 

一方、私が自転車で走った国道411は新青梅街道といわれ、雲取山の祭登山口を過ぎてから大菩薩峠の北側をずいぶんと大回している上に、途中で標高1472mの柳沢峠を越えるので、大菩薩峠の裂石(れっせき)登山口に達するまでには途中の丹波山村で一泊しなけ辿り着けなかった。


大菩薩林道1 大菩薩林道2 大菩薩峠の裂石登山口に自転車を置いて歩き始めると、里道はいつか林道に変わり、山道に変わる。

大菩薩ブナ林2 大菩薩ブナ林1 二抱え程のブナが混ざる深々とした林の小道を一時間ほど歩くと、

大菩薩ロッジ長兵衛前 車が行き交うロッジ長兵衛の前に出る。

ロッジの右手を入ると再び静かな遊歩道になり、

大菩薩福ちゃん小屋 ゆるやかな坂を歩いて勝緑荘に達してから、

大菩薩勝緑荘横 なお15分ほど登ると、

そこが大菩薩峠である。

大菩薩峠 

大菩薩峠の富士山

 「これ程、真近に富士を見たのは初めてだ」と確信めいた感動が湧き上がってきた。距離的には近い箱根や御殿場以上に大きく観せる大菩薩峠の富士山は秘めた黄金則を持っている。空の青よりは深く、近景の群青よりは浅く、青一色のグラデーションの中に凛と単座する富士山。これこそ私が抱き続けた大菩薩峠のイメージそのものだった。

大菩薩嶺 ついで大菩薩嶺に登った時に、軽い落胆のようなものを覚えた。コメツガに囲まれて視界が得られないからと謂うよりは、峠の晴れやかな景観に接した後では落差が大きかったのかも知れない。

続いて甲武信岳などに登り、31日間、1217㎞の旅を無事に終えた。


 

 

2008年 国境のトンネル

 


 この年の自転車旅行は盛り沢山だった。2004年の北海道旅行で唯一登る機会を失っていた幌尻岳に登り(9/6)、後方羊蹄山に再登し(9/11)、小樽から海路新潟に返して頚城山塊に入った。


黒姫は一茶の故郷 頚城の中心信濃町は一茶の故郷、俳諧寺に一茶の旧跡を訪ねた


戸隠牧場の中の登山道 高妻山山頂近くの大銅鏡 頚城山塊では戸隠から高妻山(9/17)に登り、


黒姫駅のブリッジ下で雨宿り 黒姫駅のブリッジの下でお定まりの5泊6日の雨宿りを楽しんだ。


黒姫駅の水汲み場 駅からは徒歩7分の所にスーパーマーケットが在るし、駅前には登山者が水筒に水を汲む為の水道も有るし、トイレも外から使えるなどA級とは謂えなくてもB+は十分といえる環境だった。





大きな地図で見る
 

笹ヶ峰は火打山と妙高山への登山口であると共に、雨飾山への経路でもあるので、是非とも自転車で到達しなければならない要所だった。


妙高杉の沢スキー場のを登ると足下に野尻湖が見える 大木の生えた五八木(ごやき)で休息 五八木の由来 京大山小屋横の雪山賛歌の碑 しかし、笹ヶ峰への道はスキー場の中をぐいぐいと急登している、という厳しい現実を知っているので、本当に登り切れるか心底不安だった。


ようやく登り着いた笹ヶ峰 

麓の杉野沢からの標高差640mは予想通り自転車で登るには厳しいものだったが、半日かかりでついに笹ヶ峰まで登り切った。休みながらも、一度も押さずに登れた事にある種の昂りを覚えると共に、今後の旅を支える大きな力を与えてくれた。

 

火打岳と妙高山への登山口 燧ヶ岳山頂 大倉乗越からの妙高山 笹ヶ峰に自転車を置いて、火打山と妙高山を泊り歩い下山すると、寒冷前線の通過待ちで三日間の雨宿りになった。

笹ヶ峰バス待合所で3泊4日の雨宿り 待合の広い回廊 自転車整備も余裕 多少の吹き降りでもテントは濡れない 筆者 バス

待合所は大きな庇と清潔なトイレと手近な水道とが揃った理想郷で、その上、次々と人がやって来て話し掛けるので退屈の暇が無いなど、この旅で一番楽しい雨宿りだった。


氷雨でも出発するツアー登山者 可哀そう 氷雨が上がるのを待って雨飾山へ抜ける乙見山トンネルに向う。

初冠雪の高妻山 寒冷前線の置き土産の初冠雪が包んだ高妻山を左手に見ながら林道ツーリングを楽しんでいた。全面に砂利が浮いたダートで、突然、大転倒。背中からもろに地面に叩き付けられた。過去最大の大転倒にしばし呆然自失、倒れたまま見上げた頭上の崖に真赤なモミジが燃えていた。

大転倒にもめげず到達した妙見山トンネル ヘルメットのお陰で怪我も無く二時間半のダート走行を終えて乙見山トンネルに到着した。

 


トンネルの額縁を通して見る景色 私の最も好きなもの 

自転車旅行のジャンルにパスハンターがある。山の向こうの景色に憧れて峠を求めて旅をするのだ。通過する最高点が峠越えでも、トンネルでも、胸躍る瞬間に賭けるのであるが、私はトンネルの額縁を通して見える景色がたまらなく好きだ。越後から信濃に抜けたトンネルの西口には、期待に違わない冠雪を輝かせた雪倉、朝日、犬ヶ岳が待っていた。



 

伊豆の踊子

 

伊豆半島を下田まで貫く天城街道は修善寺、湯ヶ島などの温泉町をたどりながら峠に近づく。川端康成もこの秋見惚れながら歩いたと思うとススキさえも親しく思えた。

  



水生地下の分岐 湯ヶ島から8㎞で旧国道が左に分れる水生地下(すいせいちした)である。

思いの外に明るかった杉林の道 

作品の冒頭に記されたつづら折りの道が始まる。頭上の杉林が秋の陽を遮る薄暗い道を数度小さく曲がって文学碑を過ぎると、やがて赤松が混ざった思いの外に明るい道に変わる。木漏れ日が浮き立たせた石垣の岩垂苔が私の目を引いた。年ごとに緑色のキルトで石垣を包んで、過ぎた時間の長さを厚みに変えて見せてくれているようだ。


800mほど行って小さな橋を渡ると、その脇に水生地の小広場が有る。作品にいう「峠の北口の茶屋」が在った所で、如何にも水が生まれる所を思わせる豊かな流れが広場の裏を走っている。今夜の炊事と明日の天城縦走に備えて水を汲む。

 


天城縦走路を歩く 

踊り子も通った旧天城トンネル 

 


トンネルの右手の杉林を数回切返して登ると縦走路の天城峠である。

昭和5年、時の天皇が八丁池まで歩かれた「上り御幸道」で、

天城縦走路崩壊箇所 

 

歩道の崩壊個所はガイドロープでコースを尾根に誘導するなど良く手入れされている。ルート上で唯一出会った流れはワサビ田の囲いの中に厳重に取り込まれて一滴の水も得られないが、秋枯れの景色の中で、そこだけが緑濃いワサビ田を見渡す斜面で一休みする。


休憩の適地八丁池 八丁池の草原と休憩舎 さらに灌木の道を一時間で八丁池に着く。広く明るい草原と東屋が在って休憩の適地である。

小さな峠の一つ:戸塚峠 この後は小さな登り下りを繰り返すが、その下った所には木々に埋もれた臼田峠、戸塚峠、片瀬峠などの小さな峠が在る。

天城の最高峰万二郎の山頂 最高峰の万三郎も灌木に囲まれて視界は無い。


ゴルフ場からの道と合流すると山頂は近い 万三郎岳へは高原ゴルフ場から四時間で周回できる道が多用されるが、天城縦走路は見逃すには余りに惜しい道である。

視界は無いが天城山脈の明るい道 

広葉樹に包まれて展望は得られないがスズ竹の下生えと疎ら過ぎず密生し過ぎない木々は、往復7時間の遠さを感じさせない一人静かな小路だった。

薄暮にはランタン型の電燈に灯が入る 夜には古風な白熱電灯がトンネルの石積みの壁を照らすが、日中は消される。暗闇中を南伊豆への出口の明りだけを頼りにコトコトと走ると、前を歩く踊子一行を追抜きそうな感覚に陥る。

トンネルから急坂を湯ヶ野に下ると、街道は下田へ向かって小さな峠を越える。


下田奉行所跡 ビバークしたペリー提督が初上陸した記念公園 下田ではペリー提督が初上陸した記念公園でビバークした。船で東京に帰る主人公に踊子が別れの手を振った乗船場は、この辺りだろうと思いながら波音に眠りを任せた。

全旅行日程56日中の19日が辛抱の雨宿りだったが、登山した16座では快晴5座、晴8座、曇または霧3座で雨天は0。その好天率は80%だった。林道での大転倒にも関わらす、2131㎞の旅が無事だったことが最大の喜びである。

 旅と登山の詳報はブログ「自転車で100名山」をご覧ください。

 

 

 

 



 

 

 

 
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プロフィール

自転車で100名山

Author:自転車で100名山
10年計画で自転車だけで100名山を完登した記録。登山旅は旅程そのものがドラマだ! 定年からの100名山は自転車の旅で楽しもう! 
トムラウシへの道には車輪よりも大きなフキが群れている。

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